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と云ったそうだ。
「おう、これか」
「どうしたい、君はその恰好をまだ見せたい気かい」
答へながら、彼は紅くなつていた。
房一は無意識に微笑しながらその眼を迎へた。正文はそこに、医者といふよりはまだ世間慣れのしない弁護士のやうな男が、土饅頭を思はせるやうな円まつちい顔を一種恭々うやうやしげな面持でかしこまつているのを、その厚いふくれた唇が不器用な微笑を浮べているのを見た。それは何となく可笑をかしみのあるものだつた。
直造は、然し、突嗟とつさのうちに考へをまとめることができなかつた。彼はあの慇懃な荘重さをとりもどしていた。が、何となく悄しをれた所のある物腰で、房一の挨拶を受けたのだつた。
「お噂はうけたまはつています」
「あゝ、よからう。大賛成ですよ」
「そんなこと位は造作もない。おれにとつては小指の先の芸当だ」
家賃はいくらでもいいと云うから、こッちで勝手にきめて持たせてやったら、多すぎる、と云って受けとったそうだが、東京の相場の四分の一ぐらいの家賃かも知れない。伊東は家賃がやすい。
と、今泉は一寸声をひそめた。
「先生、どうしなさる?着て行きますかい」
「さうですつてね」